間口が狭く奥に細長い敷地はいつも頭を悩ませる。
都市部に多くみられるこの敷地形状は、斜線制限から導かれる最大ボリュームに階を積み上げ、地上階に駐車場を入れると階段の配置はほぼパターン化され、要望の諸室を組み込めば、自然とお決まりの型とも言えるプランに落ち着いてしまう。
住まい手の暮らしは十人十色であるにもかかわらず、この都市住宅に特有の制約が、ありきたりで特徴のない計画にしてしまいがちなのだ。
この住宅では3畳に満たない小さな吹抜けを二つ挿入することでそんなありきたりな型を崩し、空間に新たな表情を加えることを試みた。
吹抜けといえば、一般的にはできるだけ大きく迫力のあるものにしたいと思う一方、間延びした空間にもなりやすいが、この小さな吹抜けのある空間は身体のスケールに近づくからか、適度な開放感と居心地の良さを覚える。
ひとつながりのLDKに吹抜けを分散させることで、食事をする場、くつろぐ場、料理をする場それぞれに異なる雰囲気をつくり、建物の中心部にも立体的に光を届けることができた。
この小さな吹抜けは些細な仕掛けではあるが、都市住宅へのアプローチとして、一つの可能性を感じられるものとなった。
設計: 廣戸 海渡
施工: 株式会社楽家
構造 : 木造3階
敷地面積 : 73.64㎡
延床面積 : 117.50㎡
竣工: 2024年8月
エリア: 東京都