家族とは「家」と「族」、家庭とは「家」と「庭」。
個人と家族、そして地域の在り方を「庭」と共に考えた、四人家族と一匹の猫のための住まいである。
敷地は甲府駅から徒歩15分。周辺には市役所や警察署などの公共施設が多く、月極駐車場の需要が高い地域である。
本敷地の東と南には大きな駐車場があり、西側にも隣地の駐車場がある。まるで「駐車場の中に住む」ような環境であった。
朝夕の車の出入りも多く、外に開いた家とするにはプライバシーの確保が難しい。
そこで、住まいの中心に中庭を設け、内に開かれた構成とした。
玄関は外部との結節点としてパブリックな空間と位置づけ、その左手にセミパブリック(家族利用)のLDKと水回り、右手に二階への階段を設け、プライベート(個人利用)の4室を配置している。
リビングとダイニング・キッチンの間には中庭とスタディコーナーを設け、物理的な距離を保ちながらも、空間的・視覚的なつながりを確保した。
一体でありながら、個を尊重できる構成である。
中庭は家族の庭であり、光と緑を家に取り込む装置でもある。
中庭とは別に設けた裏庭は、奥様の趣味や家事のための庭として機能する。
さらに、ご主人の部屋からのみアクセスできる専用テラスを設け、コーヒーブレイクや仕事の場として利用される。
また、東側道路に面して家庭菜園を設け、地域との緩やかなコミュニケーションの場としている。
この住まいは、個を尊重しながら、家族のつながり、そして地域とのつながりを感じられる家である。

