領域と公園
目の前に広がる空き地は、やがて公園となる。
その姿はまだ見えない。完成したとき、どんな風景が待っているのかも、今はただ想像の中。
ただひとつ確かなことは、そこにある空の広がりが変わらず、いつもそこにあるということだ。
その空を暮らしの中に迎え入れたいという思いから、この家のかたちは生まれた。
二階リビングに続く大きなテラス。
そこには屋根があり、網戸があり、風も光も気持ちよく流れる。
テラスの天井は高くし、窮屈さを感じさせることなく、リビングには自然の明るさが注ぎ込む。
さらに、吹き抜けが設けられたリビングには、公園の空がひと続きとなり、光を惜しみなく送り込む。
個室はそれぞれ十分な広さを確保し、プライベートな領域がしっかりと尊重されている。
一方で、三階の廊下に設置されたエアコンは、個室のドアを開けて使用することで、家族全体で温度を共有する。
家事はすべて二階で完結し、動線は最小限。効率的でスムーズな暮らしを実現している。
生活の中での無駄やノイズを最小限に抑え、個人にも家族にも心地よい構成となっている。
庭は必要ない。目の前に広がる公園が、家族全員にとっての「大きな庭」となるからだ。
個人の領域、家族の領域、そして公の領域が、少しずつ交わりながら境界を超え、静かに拡張していくようである。
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